当院で扱う疾患
5.耳の病気
急性中耳炎
急性中耳炎は、1歳から6歳までの小児がよくかかる病気です。「プールの水が入ったので中耳炎になったのですか?」とよく聞かれますが、耳の穴から入った水が中耳炎の直接の原因となる事は滅多にありません。鼻や咽(ノド)のばい菌が、耳管(鼻と咽をつなぐ管)を通って耳(中耳腔)に入っておこります。大人と比べ小児の耳管は太く、短く、より水平に近いため耳(中耳腔)にばい菌が上がりやすく、小児に多くおこります。
自分の症状をうまく伝えることのできない小さな子供さんでは、急に熱が出て来た、耳の付近を触りながら不機嫌にしている、耳から膿が出てきたなどの症状は、急性中耳炎の兆候かもしれません。早めに耳鼻科を受診し適切な治療を受けましょう。
好発年齢 | 6ヶ月〜6歳位 |
---|---|
症状 | ・耳の痛み |
・発熱 | |
・耳漏(みみだれ) | |
・しきりに耳に手をあてる | |
治療 | ・薬による治療 抗菌剤や炎症を抑える薬を内服します。 |
・膿の排出 膿がたまっている場合は、鼓膜を切開して膿を出します。鼓膜は数日で再生します。 |
- かぜが原因で起こることが多いので、普段からかぜをひかないように気をつけましょう。
- 鼻かぜをひいたら鼻水をとってあげたりかませたりしましょう。
- 完全に治りきらないと滲出性中耳炎に移行することがあります。完治するまで治療しましょう。
また最近では、なかなか治りにくい中耳炎に繰り返しかかる子供さんがおられます。特に保育所で集団保育を受けている2歳未満の子供さんに多いようです。免疫が未熟なことと耐性菌(抗生物質の効きにくいばい菌)等が原因となっていると言われています。薬物治療や鼻や咽の処置、鼓膜切開などの外科的な治療を行っても改善しない場合は、一定期間保育所や幼稚園を休んで身体の安静や周囲から耐性菌などの悪いばい菌をもらわないような対策をとることも必用です。
急性中耳炎は、適切な治療を行えば、難聴などの機能障害を残すことは滅多にありません。しかし不十分な治療で放っておくと滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行し、難聴や耳漏(耳だれ)が残ることがあります。痛みや熱が引いても自己判断で治療を中断せず、完治するまで治療を受けることが大切です。
様々な程度の急性中耳炎
それぞれ同一の人の同一時期の鼓膜の状態を示しています。向かって左が右側の鼓膜で向かって右側が左側の鼓膜です。軽度から高度まで示しています。高度の中耳炎になると本当に痛そうでしょう。高度2は、右は急性中耳炎ですが、左は滲出性中耳炎を併発しています。