当院で扱う疾患

5.耳の病気

鼓膜切開

高度な急性中耳炎や遷延する滲出性中耳炎に対して行います。鼓膜に切開を入れ、膿や滲出液の排出を行います。


急性中耳炎に対する鼓膜切開

高度な急性中耳炎に対して鼓膜切開を行うと耳痛や発熱が早期に改善し、薬剤(抗生剤)の効果も高まります。通常は、鼓膜に局所麻酔後行います。乳幼児で鼓膜に麻酔を行うことが困難な場合は、無麻酔で行うこともあります。何れにせよ切開することの利益と不利益(完全に無痛ではない)を勘案した上でお勧めします。


鼓膜は再生力の豊かな組織ですので多くの場合、数日から1週間の間に切開孔は閉鎖しますが、稀に閉鎖しない場合もあります。永久穿孔となった場合は、手術的に閉鎖する必要が生じます。


滲出性中耳炎に対する鼓膜切開

遷延する滲出性中耳炎(保存的な加療を行なっても3ヶ月以上改善がない場合、中等度以上の難聴が見られる場合など)に対して行います。急性中耳炎に対する鼓膜切開と同様ですが、切開しても滲出性中耳炎が再発する場合は、鼓室換気用のチューブ挿入術をお勧めします。


成人の場合、局所麻酔を鼓膜にかけた後、ほんの数分で手術は終了します。しかし小学校低学年以下の子供さんの場合、全身麻酔が必要となることもあります。この場合も切開することによって得られる利益と不利益を勘案して必要であればお勧めしています。


従来は鼓膜切開刀と言われる特殊なメスで鼓膜に切開を入れていました。当院での鼓膜切開は、症例によってオトラムという鼓膜切開専用に作られた特殊なレーザーメスで行います。


利点

1)メスによる鼓膜切開とは異なり出血が少ない。

2)丸く穴を開けるため切開孔閉鎖まで時間の余裕があり効果が長く持続する。

3)明視下に操作を行えるため安全確実である。


もちろん従来の鼓膜切開で行う方が安全な場合もあり、患者さんによって使い分けています。

鼓膜切開刀
鼓膜切開刀
鼓膜切開用のレーザーメス
鼓膜切開用のレーザーメス
鼓膜切開刀による鼓膜切開
鼓膜切開の様子
レーザーメスによる鼓膜切開
レーザーメスによる鼓膜切開

鼓室換気用のチューブ挿入術

遷延する滲出性中耳炎に対して鼓膜切開を行っても滲出液が再度貯留する場合に行います。切開孔の中に細いチューブを挿入し、切開孔が容易に閉鎖しないようにします。鼓膜に局所麻酔をかけてから行いますので強い痛みはありません。手術時間も5分程度です。鼓膜麻酔が困難な小学校低学年の子供さんには、全身麻酔をかける必要があります。


鼓膜の状態を定期的(1〜2ヶ月に1度)に観察させていただき、チューブ挿入から2年を目処に抜去します。


この処置によって稀ですが鼓膜に永久穿孔が残る場合もあります。切開することによって得られる利益と不利益を勘案して必要であればお勧めしています。


鼓室換気用チューブの挿入1
鼓室換気用チューブの挿入1
鼓室換気用チューブの挿入2
鼓室換気用チューブの挿入2

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